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Update 2015-02-28

コアラブ!




俺と巫女と和の神




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コアラブ!-第1章-Page6
 桃香は無言でドカっとオレの隣に座ると、オレを見て、それから言音を睨みつけ、地獄からの声のごとく、女の子とは思えない低い声で言った。
「ダレ?」
「九鬼宮言音っていって、講堂の場所が分からないっていうから連れて来たんだ」
 平静を装い、できるだけ明るい声で答えるオレ。それを聞いてか今度は言音が、普通の声だが妙に平板に問いかけてきた。
「だれ?」
「こいつは幼なじみの真下桃香、同じクラスだから仲良くしてやってくれ」
 真ん中のオレをスルーして睨み合うふたり。いや、アホじゃないから桃香がオレという所有物を取られるんじゃないかと警戒しているのは分かるが、言音はなぜにらみ合う必要があるのか分からないのである。違う、オレは桃香の所有物じゃなかった。
 
 そうこうするうち、入学式が始まった。
 立ったり座ったり、祝辞だの挨拶だのという、毎年どうせ同じ内容なんだろうと思われる話を聞かされ続ける。
 あれ? そういえば理事長のところにも九鬼宮と書いてあるな。親戚か親子だろうか。
『新入生誓いの言葉、新入生代表、九鬼宮言音』
「はい!」
 いきなり隣で大声を出さないで欲しい。心臓に悪いぞ。
 言音はつかつかと歩いて登壇すると、用意されていた文章を読み上げていった。
「……ことを誓います。なお、私事ですがコアラ部を新設しました。都筑神作! あんたは入部決定だから! 以上、新入生代表、一年C組、九鬼宮言音」
 壇上からビシっと指さして、フルネームでのご指名である。オレが困惑していると、すっと隣の桃香の手がオレの手に重ねられ握ってきた。骨よ折れよとばかりに。
 席に戻った言音に、オレは痛む手をさすりながらも聞かずにはいられなかった。
「なあ、コアラ部って何だよ、何でオレが入部決定なんだ?」
「あたしがシングルナンバーだって見破ったからよ」
「意味が分からない。オレはコアラなんて興味ないぞ!」
 小声で最大限の抗議である。
「後で教えてあげるから、今は静かにしてなさい」
 間もなく入学式も終わり、オレは紫色になった手をさすりながら家路についた。結局、コアラ部が何なのか聞けなかったのだが、明日聞いたって遅くはないだろう。ってか無関係だし。
「で、コアラ部って何なのっ? いつ神作はあの子と親しくなったのっ?」
「知らないよ、寝耳にミミズだ」
「寝耳に水でしょっ? よくそれで小説書くなんて言えるねっ」
「アホか。水よりインパクトがあるのが、ミミズなんだよ! オレなんて毛の生えない国語学者くらいのレベルはあるんだからな」
 しかもミミズは耳の中にまで入ってきそうだから怖さも半端ない。
「アホは神作だよっ。何言ってんのっ? ハゲの国語学者って」
「素人に毛の生えたって言うだろ、まだ毛の生えない国語学者くらいだって言ってんだ」
「意味わかんないっ。とにかく、変な部活とか、えっちな部活は禁止だからねっ」
「何でオレの部活を桃香に決められなきゃいけないんだ?」
「じゃ、コアラ部ってのに入りたいのっ?」
「いや、それはないけど。ってか、お前の部活は決めてるのかよ」
「当然でしょっ? 高等部では神作と同じところって決めてるよっ。中等部で野放しにしちゃって失敗だったから、だからえっちなのはダメって言ってんのっ」
「さいですか。オレの高校生活も終わったな」
「初日に何言ってんのっ。可愛い桃香との三年間が楽しみだって、どうして言えないのっ?」
「そうだな、可愛い桃香と三年も一緒にいられるんだな、楽しみだよ」
 などと、できるだけ良い声で、心にもないことを言ってみる。
「な、何バカなこと言ってんのっ? それ本気?」
「いや、お前が言えってゆうから言ってみたんだが」
 そう言った途端、鈍い痛みがみぞおちから全身に広がり、呼吸が一瞬できなくなった。
 正拳突きだ。
 親父さんは桃香に空手を習わせていて、結構強い。護身のためとか言ってるが、警察官にしようという魂胆が丸見えだな。初段をわざと取らせないようにしているんだが、それは有段者となると、傷害罪で裁かれる際に量刑が重くなるからだとオレの灰色の脳細胞は分析している。しかし桃香自身は、空手有段者じゃお嫁のもらい手がなくなるからなどとほざくのだが、そもそも嫁に行けると思っている時点でおめでたい。
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