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Update 2015-02-28

コアラブ!




俺と巫女と和の神




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コアラブ!-第3章-Page37
 朝食を済ませ、桃香もやってきてオレの部屋に三人がいつもの作業をしていると、携帯が鳴った。まさか、江口か? どきどきしながら見ると、着信は雪華だった。
「もしもし、どうした、朝っぱらから」
『メーデー、メーデー、ヘルプミィや!』
 メーデーは遭難信号で、フランス語のメデm'aiderが元になっている。意味はヘルプミィだ。テレビやドラマで二回しか言わないのは、三回言うと遭難信号として受け取られるからだろう。もし、本当にそういう場面になったら三回言おうと決めているのだが、多分一生言わないだろうな。
『……都筑、聞こえてへんの?』
 おっと、そんなこと考えてる場合じゃなかったな。
「聞こえてるよ、何かあったのか」
『締め切りやねん、今日締め切りやけど終わらへんねん、助けて都筑!』
 なんだ締め切りか。プロならともかく、同人誌の締め切りくらいで死ぬことはない。
「助けるって言っても、オレはあんまり絵なんて描けないぞ」
『ええねん、消しゴムでも、ベタでも、トーン貼りでもええから手伝って欲しいんよ』
 パソコンとペンタブで描いてるんじゃなくて、昔ながらにやってるようだな。
「手伝うのはいいが、桃香も一緒だぞ、そうじゃなきゃ手伝えない」
『そんなトーカと一緒にいたいん? けど、手伝いが増えるのはむしろ大歓迎や』
「で、どこに行けばいいんだ?」
『ウチの家、トーカが知ってるから、できるだけ早よ来てや』
「分かった、じゃあな」
『ほんま、頼むな』
 当然、聞き耳を立てていたふたりである。
「もしかしてセッカ? 助けるって何?」
「締め切りだから手伝って欲しいそうだ」
「桃香も一緒じゃなきゃイヤだなんてっ、神作ぅ、そんなに私と一緒にいたいのっ?」
「まあ、一緒にいて欲しいとは思ってる」
 ただし、ボディーガードとしてだけどな。
 桃香はいそいそと、家で支度して来ると言って帰って行った。
「何? お兄ちゃん、今日も出かけるの?」
「ああ。昼は分からんから、お前だけで食っとけ。夜までかかるようなら電話すっから」
「分かった。ここで作業しててもいい?」
「ここでって、何の意味があるんだ? 自分の部屋とそう変わらんだろ」
「いいの、こっちの方がインスピレーションが湧くんだから」
「ならいいけどさ」
「じゃ、気をつけて行ってきてね、お兄ちゃん」
「ま、行って来るわ」
 その言葉に追い出されるように部屋を出た。もうちょっと暇つぶししてから出てもいいかと思ってたんだけどな。
 桃香の家の前でしばらく待っていると出て来たのだが、何を思ったか、結構お洒落で清潔感漂う薄黄緑のワンピースを着て、うっすらと化粧までしていた。ちょっといい匂いまでする。
「どうした、化粧なんかして」
「あ、気づいた? ママがねっ、神作とふたりで出かけてくるって行ったら、じゃあちょっとお化粧くらいしなさいって、やってくれたのっ」
「そっか、結香さんならやりそうだな」
 桃香によると雪華の家は、バスでちょっと奥の方に行くのだという。
 大通りに出るとバス停で結構待ってから、やっとバスが来た。ひとりじゃ退屈だが、桃香がいるからどれだけ待っても時間を持てあますということはない。実際、凄いと思うんだが、毎日何時間も一緒にいて、かなりの量の話をしているのに、それでもまだ話題があるのはどうしてだろう。
 バスというのは近距離のイメージがあり、旅という感じがしない。やはり、ボックスシートの電車の方が旅という感じが出るな。新幹線を使うと、途中は移動だけという感じになるが、各駅停車なら途中もまた旅という風情になる。桃香の話に「ああ」とか「へぇ」などと応えながら、そんなことを考えていた。
「ちょっと聞いてるのっ?」
「ああ、今度は電車でどこか行こうか、どこか遠くまでさ」
「そ、そうねっ」
 まったく話題とは違うはずなのだが、桃香は怒るでもなく、同意してきた。
 沢出さわいで温泉というバス停で降りる。もうちょっとで終点だという奥まった場所だ。
 そこから緩い坂道を登っていくと、沢井旅館という、結構風格のある大きな旅館が見えてくる。某アニメ映画の温泉旅館に似た外観だ。
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