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Update 2015-02-28

コアラブ!




俺と巫女と和の神




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コアラブ!-第4章-Page48
 真面目に探し始めた時だった。
 別の通路の奥の方から女性の悲鳴が聞こえ、直後にどすっという音がした。
 オレの灰色の脳細胞が何かを警告している。
 大声で桃香を呼んだ。
「桃香、どこだ!」
「私はこっちよ!」
「お前は出口を塞げ、誰も外へ出すな!」
「分かった!」
 すぐに、オレは音のした方へ向かった。
 その通路の奥には、目を見開き、仰向けに倒れている女性がいた。彼女はこの店のアルバイト店員で、腹部から血が流れている。
「桃香! 救急車を呼べ! 店員が刺されて倒れてる! ただし、そこを動くな、犯人はまだこの中にいる! 店の中にいる人はその場を動かないで!」
 見ると呼吸をしていないようだ。ムダかもしれないが、とりあえず胸骨圧迫する。俗に心臓マッサージというやつだ。両手で胸骨、つまり鳩尾みぞおちを五センチほど押し下げることを、一分間に百回ほど行う。
 彼女のすぐ傍に、血で『オレ金マ玉小』と書かれていた。血痕も混ざってるから、玉ではなく王かもしれない。
 彼女が書いたのか?
 消防署が近いことが幸いし、二分ほどで救急車が到着した。オレは救急隊員に胸骨圧迫を代わってもらい、そこにへたり込んだ。疲れた……
 彼女は病院に緊急搬送されていった。助かるといいな、いや、助かって欲しい。
 くそ、犯人は誰だ!
 それから間もなく、パトカーが到着した。
「神作! 大丈夫っ?」
「ああ、おれは胸骨圧迫で疲れただけだ、店の封鎖は?」
「警官が立ってる。パパが来たの」
 桃香の親父さんが大股でやってきた。
「都筑神作か、お前が犯人じゃないだろうな」
「パパ! 何バカなこと言ってるの!」
「刑事は疑うことが商売だからな、状況を話せ」
「オレが本を探していたら、奥から悲鳴と倒れる音がしたんで、すぐに桃香を店の出入り口に向かわせて、ここに来てみたら店員が倒れてたんです。呼吸停止だったから胸骨圧迫して、救急車が来て搬送されて行きました」
「かなりの量出血してるな、お前にもかなり付着している。桃香、こいつの家に行って着替えを持って来てやれ」
「分かったわ」
 すぐに桃香は走って行った。
「で、これは何だ? これは……将棋か何かか?」
「多分、ダイイングメッセージでしょう」
「刺されてしばらくは意識があったということだな」
「それと、顔見知りの可能性もありますね、犯人を知らないなら、メッセージは残さないでしょうから」
 速歩で近づいてきた警官が親父さんに報告した。
「警部! 店内には他に客が三人いました、任意で待ってもらってます」
「よし、ひとりずつ話を聞こう。神作、お前もだ」
 オレも容疑者だもんな、当然か。
 店の一角に椅子をふたつ置き、親父さんと店主が座り、オレは親父さんの後ろに立って、店主の後ろには警官がひとり立っている。
 オレは話を聞かれるんじゃなくて、なぜか一緒に話を聞く側だった。
 
 客のひとり目、稲本さんは三十四歳で痩せた人だった。
「ええ、よくこの店に来てましたよ、悲鳴と音は聞こえましたが、出入り口を塞げとか、動くなという声がしたので怖くなってその場にじっとしてました。彼女との関係ですか? 実は交際を申し込んでたんですよ、返事はまだもらってないですけどね」
 客のふたり目、本木さんは四十七歳のちょっと太めの人だ。
「私はまあ常連でしょうな。悲鳴と妙な音がしたんで行こうと思ったんですが、動かないように言われたんで、少しくらいはいいかと、その辺の本を見てましたよ。彼女との関係は、本について話をする程度でしたが、結構声を掛けてくれるいい子でした」
 客の三人目、本名さんは二十五歳で、少し目つきの悪い若者だった。
「こいつで音楽聴いてたから悲鳴も何も分からないな。彼女との関係? 友だちだよ。けど好意を持ってくれてたと思うな。あいつとはバイト先で仲良くなって、しばらくして急に辞めたんだ。したら、会いたくなって探したさ、この前ここにいるのを偶然見かけて、運命だって思ったね。それからは結構会いに来てるな」
 最後は店主の本多さん七十一歳である。
「私はずっとレジにいました。悲鳴の後で声がして、女の子が出入り口の見張りに来たんですが、こんな可愛い子じゃ危ないと思って、一緒に立ってましたよ。稲本さんはこのところ毎日来てましたね。サッちゃんと話をするためだけでしょう。そうそう、交際を申し込まれて断るつもりだと言ってました。本木さんは古くからの常連さんで、本にも詳しいし私もよく話をしましたし、サッちゃんが話をしているのもよく見かけました。もうひとりの本名って人は名前は知りませんでしたが、このところ毎日のように来てましたね。実はストーカーまがいでサッちゃんは怖がってました。うちでバイトするようになったのも、彼から逃げるためだと言ってましたから」
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